ウォシュレット 裏話

 2〜3年前のことだったでしょうか。事務所にこられたH様が、「あんたのとこは、外国にもウォシュレットつけるとね」と尋ねられます。
 あいにくテイキング・ワンでは、海外進出は考えていませんでしたが、せっかくこられたので事情だけはお聞きしようと、お話をうかがいました。
「外国って、どこですか」
「香港たい。うちの会社が店を出しとるんやけど、客用トイレにウォシュレットつけてくれち言うてくるったい。ところがくさ、現地の中国人に言うても取り付けでけんて言うけんくさ、あんたんとこがTOTOと組んで、現地でウォシュレット販売すればよかろうたい」
「……」
 お申し出はうれしゅうございますが、現地の人が取り付けできないと言うからには、きっとなにか理由があるはず。

 所長の田篭が、さっそくTOTOに電話を入れます。最初はTOTO福岡南ショールームの所長、次にキャナルシティの九州支社に、次に北九州の本社に、またまた次は東京のTOTOにと、どんどん情報が回されます。そしてついに香港のTOTOから直接テイキング・ワンに電話がかかってきました。事情を説明すると、
「え? 香港でもウォシュレットは取り付けできますよ」
 と、意外な返事。
 あれこれとやりとりをするものの、いっこうに埒があかないので、直接H様とTOTOとでお話してもらうことになり、その後、この件は忘れかけていたころでした。

 またまた、ひょこっと事務所に登場されたH様。
 ニコニコしながら入ってみえたそのお顔を見て、「あ、そういえばウォシュレット……」と、こちらが思い出したと同時に、
「うちのあたりでは、つけられんやったったい!」
 と、H様は豪快に笑われます。
 いったいなにがどうなったのか、興味津々の私が詳しくお話しをうかがうと。

 香港では、当時、下水に使われる水は海水がほとんどで、一部の住宅地だけが専用の水槽に真水を引いてウォシュレットを使用していました。
 海岸に近かったH様のお店の下水は海水で、もし真水を引きたいなら、水槽の設置や下水管のやり換えまで考えないといけません。ウォシュレットのためだけにそこまでの設備投資をすることはとうていできないと、H様はすっかりあきらめておられました。
「香港では、高級住宅街しかウォシュレットはつけられんと」

 ああ、だからTOTO香港支店の人は、取り付けできると答えたのか。
 やっと話が腑に落ちた私は、H様と一緒に豪快に笑わせていただきました。

 お国が変わればウォシュレット事情も変わる。
 たとえば日本国内でも、井戸水をひいていあるお宅は、水栓金具やウォシュレットのような精密機器は比較的早期に故障したり破損したりします。水質は、地域によっておどろくほど違うので、ある場所ではなんともない水栓金具が、隣の町ではわずか5年で錆びてポッキリ折れたりします。

 水回りをリフォームして新しい設備に入れ替えるときは、なるべく水道水に切り替えて、井戸水は庭の散水や飲み水専用として使い分けされることをおすすめします。

 もし香港で、海水なのに無理矢理ウォシュレットをつけていたら、ウォシュレットのノズルから塩辛い海水が飛び出てくることになり、なんだか痛い思いをしそうですね(^^;
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