リフォームは「家」のために。
せみの声せわしい盛夏の訪れです。
この時期、建設業で言えば、いちばんたいへんなのが、瓦を葺き替えたりする屋根屋さん。そして同じくらいたいへんなのが板金屋さんです。
35℃を超える日だと、屋根の上はいわゆる「目玉焼きが焼ける温度」にせまってきます。
そんな中、塩をなめながら、倒れないように休み休み作業をする職人さんたちは、本当にすごいと思います。
そのような職人さんたちが一生懸命つくってくれた「家」、
そして夏の暑さや冬の寒さなどの過酷な環境から、住む人を守ってくれている「家」。
今日は、「家」を、どのようにメンテしていけば長持ちするか、そんな話をしたいと思います。
家って、空き家にしてるとすぐにボロボロになってしまいますよね。
家は、
とくに日本の木造住宅は、
人が住み、窓をあけて風や光を通してやることで、健康的になるのです。
もちろん、それだけでは長持ちはしません。
家を傷める最大の原因は、湿気。
床下の環境が悪い場合は、土台が傷んだり白アリが巣くったりしやすいですよね。
昔の家は、地面から床までの高さが40cm程度しかないものも多く、そういった家はリフォームする際に、床を上げて断熱材を入れてあげるのがもっとも効果的です。
床を高くすると、床下の風通しも良くなるし(高床式ってありますよね、あの理屈です)、地面からの寒気があがってきにくくなるので防寒にもなります。
家が健康になれば、長持ちし、長持ちすれば住んでいる人間のためになります。
反対に、困ったリフォームをしてしまうと、住んでいる人を困らせることもしばしば。
住んでいる人が困ってしまうようなリフォームって、たとえばどんなリフォームでしょうか。
ひとつ、ご紹介します。
依頼を受けて、当社が住宅診断したお宅の例です。
数年前に他社にて大規模リフォームをされ、二階を増築されました。
数年したら、2階の床がさがってきました。
1階の窓があかなくなりました。
いろんなところに、ひずみが出ています。
これは、柱も耐力壁もなにもない1階部分の真上に、2階を増築して荷重をかけたから起きた現象です。
少し極端ですが、このイラストで言えば、2階部分を水色の場所に置くのはセーフですが、赤はアウトです。
これは、誰でもわかる理屈ですが、
それでも、こういうことは起きています。
ですので、リフォームするときは、価格が安いということも、もちろん大事なポイントですが、やはり1番は、建築に精通した信頼できる業者を選ぶことが、良い工事をする上での秘訣です。
ここ十数年の間でリフォームは、人間の利便性や快適性を追求した商品を売ることが主流となり、だから電気屋さんでも水道屋さんでもクロス屋さんでも誰でもリフォームすることができるようになり、その結果、「建築的視点」がおきざりにされてきたと言えます。
便器を取り替えました。キッチンを新しくしました。お風呂を取り替えました。
では、きれいになった裏側や、壁の中は?
せっかく表面を新しくしても、内側は古いままかもしれません。
利便性を追求するあまり、切ってはいけない柱を切って間取りを変更してしまっているかもしれません。
実際に熊本地震でも、建てた当時のままの部分は倒壊しなかったのに、リフォームをした部分だけが壊れてしまった、という住宅がたくさんありました。
それでは、「家」のためになるリフォームとは、どういうリフォームでしょう。
それが、長期優良住宅化リフォームの対象工事となり、国交省より補助金が出る工事です。
対象工事には、【必須項目】と【選択項目】があり、【必須項目】は、補助金を申請する上で必要な工事です。
1.タイルのお風呂をシステムバスに取替
なぜシステムバスにリフォームすることが家を長持ちさせる上で必要なのか?
これを説明するのは長くなりますので興味のある方だけ読んでください。
タイルのお風呂は、タイルの下すべてが土で埋まっています。
床のタイルを剥がしたら、いきなり土が出てきます。
もちろん浴槽の下も、全部です。
タイルや目地にヒビが入ると、漏れ出した水は土の中に入り込んで、まわりの材木を傷めます。
よくあるのが、浴室への出入口付近の床がブカブカしてるというご相談です。タイル目地から水が漏れ出して、土台となる材木を腐らせているのですね。
そういうお宅は、リフォームのとき、必ず白アリ被害がないかどうか調査してもらいます。
また、浴室自体が土に接しているため、地面からの冷気が直接伝わってきて、「浴槽のお湯がすぐに冷める」「床のタイルが冷たい」「冬は洗い場で体を洗うのがいやになるほど浴室自体が寒い」という環境になってしまうのです。
では、なぜシステムバスにすると、その2つが解決できるかというと、システムバスのまわりには、「土」のかわりに「空気層」ができるからです。
ですので、タイルの浴室をシステムバスにリフォームする際には、タイルの下に埋まっている土を、掘り出して廃棄処分します。そして、掘ったあとにセメントモルタルを敷き詰めて、その上にシステムバスを支える架台を据え付けます。
こんな感じです。
この上にさらにシスバスの床パーン、浴槽などを設置しますので、直接土に接する部分はまったくなくなり、「温かい」「お湯がさめにくい」浴室になります。
土がなくなったので、土台に湿気が伝わりにくくなります。また、タイルや目地からの水漏れの心配もなくなるので、白アリ被害も激減します。
このように浴室のリフォームは、構造耐力上主要な《柱、土台などの木材》を、湿気や水漏れなどから隔離することによって、家を長持ちさせる。その点で大きなポイントとなります。
昔ながらの木造の家が、100年200年と長持ちしているわけ。
余談ですが、参考までに。
「400年以上前に建てられた国宝級のお寺が、今もしっかりと存在しているから、いい木を使えば木造住宅は長持ちするはず」と信じている方がときどきいらっしゃいますが、それはちょっと違います。
国宝級の神社仏閣などは、同じ「木造」で「木」が同じでも、「造」が今の住宅とはまったく異なります。
まず、大昔に建った木造建築物は、「水まわり」が家の中に存在しませんでした。
昔の家は、台所は土間に。風呂は家の外の小屋に。便所は廊下の1番奥にありました。井戸水を汲んで炊事洗濯していたので、家屋に水道管が通ることもありません。
つまり、昔の木造建造物は、「住居」と「水まわり」はきっぱり縁を切ってゾーニングしていたのです。
また、床下はいまの住宅のように基礎で囲うことなく、のぞきこんだら向こう側が見えるくらいにスッポンポンに通風をしていたので、湿気がこもりにくかった。
高温多湿な日本では、「木の家」を長持ちさせるために、そういう造りになっていました。
短所は寒いことでした。
以前なにかの記事に書きましたが、江戸時代の北海道開拓期に、本土の住宅文化をそのまま北海道に持って行って家を建てたら、あまりに寒くて、たくさんの凍死者が出たという歴史があります。
その後、昭和初期の団地ブームの影響で、木造なのに水まわりが家の中にあるっていう造りの家が一気に広まったのですが、やはりそんな家は長持ちしないため、当時は「家は20〜30年で建て替えるもの」という認識が普通でした。
木造の建造物が100年を超えて健在していられるのは、長持ちする「造り」になっていて、かつ、非常にこまめなお手入れと定期的なメンテナンスがされているからなのですね。
とっても長くなりましたので、続きは次回「リフォームは家のために2」に書きますm(__)m